前回の記事では、証拠には「担当部署」がある、という話を書きました。

給与明細さん、金額担当。
通帳履歴さん、入金確認担当。
メールさん、相手方発言担当。
証拠説明書さん、名札担当。
証拠は、ただ集めただけでは働いてくれません。
役割を与え、名札をつけ、読む人に紹介してあげる必要があります。
今回は、現代のトラブル対応でよく使う資料、スクリーンショットの話です。
スクショは便利
現代のトラブル対応で、スクリーンショットは非常に便利です。
メール。
LINE。
SMS。
ウェブ画面。
ネットバンキング。
SNS。
何でもスクショできます。
とりあえず画面を保存できる。
その場で残せる。
あとで見返せる。
これはかなり助かります。
私も、重要そうな画面ややり取りは、かなり保存しました。
スクショは、証拠界のインスタント食品です。
便利。
早い。
とりあえず助かる。
ただし、それだけでフルコースにはなりません。
スクショの弱点
スクショには弱点もあります。
たとえば、
- 日時が分かりにくい
- 前後の文脈が切れている
- 誰とのやり取りか分かりにくい
- 画像が小さくて読みにくい
- どの順番で読むのか分からない
こういう問題が起きます。
相手の変な一文だけをスクショして、
ほら、変でしょう!
と言いたくなることがあります。
気持ちは分かります。
相手の珍妙な文章を金屏風の前に飾りたい。
「本日の珍文」として額装したい。
しかし、読む側からすると、
この前後はどうなっていますか?
いつのやり取りですか?
誰とのやり取りですか?
これに対して、あなたは何と返しましたか?
となります。
スクショは便利ですが、切り抜きすぎると、証拠界のショート動画になります。
テンポはいい。
でも、文脈が飛ぶ。
相談資料や裁判資料としては、できるだけ文脈を残した方が安全です。
スクショに説明を添える
スクショを使う場合は、番号を付けて説明を添えるとよいです。
たとえば、
資料3:〇月〇日の会社からのメール画面
相手方が、支払方法について〇〇と述べたことを示す。
このように書いておく。
「スクショあります!」だけではなく、
このスクショは、〇月〇日に相手方が〇〇と述べたことを示します。
まで言えるようにする。
ここまで来ると、スクショもかなり働き者になります。
重要なやり取りは、可能であれば前後の文脈が分かる形で保存した方がよいです。
メールなら、本文をPDF化する。
LINEなら、日時と相手が分かる形で保存する。
スクショを使う場合も、順番と意味が分かるようにしておく。
スクショは便利です。
ただし、単体で置いておくと、少し迷子になりやすい。
名札と地図をつけてあげる必要があります。
自分に都合の悪い証拠も、一度は見る
証拠を集めていると、どうしても自分に有利なものを中心に見たくなります。
これは人間なので仕方ありません。
自分に有利なメールは、何度も読み返す。
相手の変な文章は、保存用・鑑賞用・布教用に分けたくなる。
一方で、自分の言い方が少し強かったメールは、そっと見なかったことにしたくなる。
しかし、ここは危険です。
自分に不利そうな資料も、最初の整理段階では見ておいた方がいいです。
なぜなら、相手が後から出してくる可能性があるからです。
自分の中で把握していれば、説明できます。
把握していないと、突然出されたときに慌てます。
これは、部屋の片づけと同じです。
押し入れに全部突っ込んで、表面だけきれいにしても、来客が押し入れを開けた瞬間に終わります。
証拠整理も同じです。
自分に都合の悪そうなものも、一度は床に出す。
見たくない資料にも、名札をつける。
そのうえで、どう説明できるかを考える。
所長におやつをあげ忘れた記録も、消してはいけません。
再発防止策を立てるためです。
証拠整理は、自分を落ち着かせる作業でもある
証拠整理というと、どうしても戦闘準備のように聞こえます。
たしかに、相手方の主張に反論するためにも必要です。
手続に進むなら、なおさら重要です。
しかし、証拠整理の目的はそれだけではありません。
自分自身が、状況を正しく見るためでもあります。
証拠を整理すると、
- 本当に請求できるものは何か
- 足りない資料は何か
- 相手が何を争っているのか
- こちらの説明が弱い部分はどこか
- 逆に、動かしにくい事実はどこか
が見えてきます。
これは、かなり重要です。
怒っているときは、世界が全部敵に見えます。
疲れているときは、全部どうでもよくなります。
どちらも危険です。
証拠整理は、その中間に立つための作業です。
熱くなりすぎた自分に、冷たい資料をぶつける。
冷えすぎた自分に、事実の積み上げで少し火を入れる。
そんな感じです。
証拠整理は、相手を倒すためだけの作業ではありません。
自分が状況に飲み込まれないための作業でもあります。
まとめ:証拠は、料理してから出す
証拠は大事です。
しかし、集めただけでは足りません。
証拠は、材料です。
給与明細という肉。
通帳履歴という玉ねぎ。
メールというスパイス。
時系列表という鍋。
証拠説明書というレシピ。
所長のおやつという、なぜか最優先される別会計。
材料を集めただけでは、料理にはなりません。
切って、並べて、火を入れて、味を整える。
読む人が食べられる形にする。
それが、証拠整理なのだと思います。
感情だけで終わらせない。
制度や言葉を使って、自分の足元を守る。
そのためには、証拠をただ抱え込むだけではなく、
証拠に仕事をさせること
が必要です。
次回は、少額訴訟とは何かについて、体験者目線で書いてみます。
制度としてはシンプルに見えますが、実際に使ってみると、
「なるほど」と思うところも、
「そこはそうなるのか」と思うところもありました。
そして、本人訴訟の世界では、
自分が原告であり、事務員であり、コピー係であり、郵便係であり、ときどき自分のメンタル担当でもあります。
所長は、主に監督官です。
実際の経緯や、証拠をどのように整理して少額訴訟へ進んだのかについては、note連載でも書いています。
このブログでは、制度面・実務面を中心に整理し、noteでは当時の経緯や心情も含めて記録しています。

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